秘密の地図を描こう
03
小さなため息とともにキラは手を止める。
「どうかしましたか?」
即座にレイが声をかけてきた。
「何でもないよ」
苦笑とともにキラは言い返す。
「あの人にも、オーブにも異常はないから、安心していいよ」
地球軍の方が騒がしいのはいつものことだ。そう続ける。
「それだけじゃありませんよね?」
しかし、彼はそれだけで納得してはくれない。
「ほかにもまだ、何かあるのではありませんか?」
そう追求してくる。
「教えてくださらないなら、俺としてはギルに報告しなければいけませんが」
キラが、また、何かを隠している。体調のことであればやっかいだからこちらに来てほしいと……と彼は続けた。
「……ギルバートさんは、忙しいでしょう?」
彼のことだけではなく、議長という要職にも就いたのだから、とキラはため息をつく。
「どうして僕がここにいるのか。その理由の一つがそれだって、君も知っているでしょう?」
だから、ギルバートには内緒にしておいてほしい。そう続けた。
「なら、何を隠しているのか。教えてください」
「……教えたら、隠し事にならないでしょう?」
全く、とため息をつく。
「過去に、ご自分の体調の悪化を隠していて大事になったからでしょう」
違いますか、と彼は言い返してきた。
「それを言われると、反論のしようがないんだけど……」
しかし、今は体調はいい。周囲の雑音から切り離されているからかもしれない、とキラは思う。
「でも、本当にプライベートなことなんだよ?」
それでも聞きたいのか、と言外に問いかけた。
「……あなたの言葉が本当でしたら、速攻で忘れますから」
彼の言葉をどこまで信用していいのだろうか。そう思わずにいられない。だが、教えない限り彼はあきらめないだろう。
「……ラクスからのメールの返事をどうしようかなって、思ったんだよ」
彼女に以前教えたメルアドに連絡が来ていたから、とため息をつく。
「無視したら、何をしてくれるかわからないし」
「それは……否定できませんね」
とりあえず、それに関しては速攻で忘れます……とレイは口にした。
「うん……お願いね」
これは自分で何とかしないといけないことだから、とキラは苦笑を返す。
「それよりも、そろそろ、自由時間が終わるんじゃないかな?」
部屋に戻らなくていいの? と話題を変える。
「もう、そんな時間ですか?」
慌てたようにレイは視線を移動させた。その先には時計がある。
「……本当ですね」
深いため息とともに彼はそうはき出す。
「今日の講義でわからないところがあったから、質問させていただこうと思っていたのに」
「そんなこと言われても……僕は知識はほとんどないよ?」
アスランやディアッカが見かねて教えてくれた程度しか、とキラは言い返す。
自分の技量は、ほとんどが実戦で身につけたものだ。
だから、こういうときには参考にならないのではないか。そう続けた。
「……そうなんですか?」
「元々がイレギュラーだったしね」
MSに乗り込むようになったのも、そのとき乗り込んでいた船も……とキラは少しだけ苦い笑みを浮かべる。
「だから、聞かれても答えられないことの方が多いかな?」
まだ、シミュレーターで相手をする方がいろいろと助言できるかもしれないが……と続けた。
「それは一番お願いしたいですが……キラさんの体調次第ですね」
そのせいで倒れられても困る、とレイは言い返してくる。
「まぁ、教官と相談してみます」
この言葉にキラは苦笑を浮かべた。
「その前に、自分とつきあえと言われそうだね」
なんか、ものすごくやっかいなことになりそうだ。そういえば、レイは苦笑を帰してきた。